「マイナス60度」の超急速冷凍システムで食品を「完全凍結」
冷凍技術の進化で食料の長期保存が可能になった現在だが、じつは一般的な家庭用・業務用冷凍庫は、解凍時に味や食感、色が劣化したり、冷凍焼け、油焼けしたりと問題点も多い。原因はこれらの冷凍庫の冷凍温度がマイナス15~35度程度なので、食品は表面組織の水分からゆっくりと凍結が始まることで、氷結による膨張を起こし、細胞組織も破壊されてしまうこと、この温度帯では食品内の脂肪分や塩分が分離して完全凍結されず、酸化や酵素・微生物の活動を抑えきれないため劣化してしまうことなどが挙げられる。
今回受賞した「フードタイムマシン」は、「マイナス60度」という超低温での高速凍結を実現。その秘密は急速冷凍加速装置「READY BOOSTER」と、マイナス60度でも凍らない振動不凍液「FTFフードタイムフリーザー」の開発にある。
マイナス60度なら食品内の細胞組織を壊さずに水分と脂肪分を同時に素早く凍結できる。振動不凍液「FTFフードタイムフリーザー」は、水晶の持つ格子振動による凍結抑制、炭素の持つ超低温安定化冷媒による温度上昇抑制を利用したもの。真空パックした食品をこの不凍液に入れ振動を加えることで、一気に最大氷結生成帯(食品内部に大きな氷結晶ができ細胞が破壊されてしまう温度帯。一般的に-1~-5度を指す)を通過させることに成功。このため、本来の味覚・食感・香りはそのまま、鮮度を保ったまま長期間の保存が可能になった。
「この冷凍技術を使えば旬の素材を素早く完全凍結できるので、年間を通じて旬の味を再現できます。脂肪分の劣化も起きませんし、アニサキスなどの寄生虫は死滅し、一部の微生物の増殖を抑えるので、安心・安全な状態で冷凍保存できます」と代表取締役の仁居弘一さんは胸を張る。