IoT、AI、クラウド技術を活用して、リアルタイムに「海を知る」
波の高さ、潮位、流れ、水温、風向き、気圧など、海のさまざまな環境の変化を観測し、その数値をリアルタイムで知らせるシステムが、今回受賞した「みちびき準天頂衛星を活用したブイ型観測プラットフォーム」だ。これは高精度で安定した日本の衛星測位システム「みちびき」を利用し、海上に浮かべたIoT端末を使って様々な海の状況を観測するもの。太陽光発電を利用した電源・通信・計測機能を標準装備した端末を、わずか直径80センチの浮き輪に搭載した「みちびき海象ブイ」を使うことで「無人・無動力」での観測を実現した。
このブイを海上に浮かべるだけで、その場に行くことなく、水産業や海運業、観光業などの現場の海中・海上の状況をピンポイントでモニターすることができる。
例えば漁に出る前に漁場の正確な水温や波の高さ、流れなどがわかれば漁場予測ができ、効率的な漁ができるだけでなく、台風などの自然災害も避けることができる。観光地ではフェリー出航の際に必要な波の高さの情報をリアルタイムで知らせることで安全な出入港ができる。潮位や波の高さ、風の強さなどが勝負に関わるウィンドサーフィンやヨット競技の正確な順位測定にも、このシステムが使われている。
「現在は海での利用が多いが、今後は河川でも利用ができるように、さらにシンプル化、小型化を目指し、コストダウンできるよう改良して、最近増えてきた洪水被害を未然に防ぐ社会作りに貢献したい」と代表取締役・伊藤喜代志さんは話す。