紅茶の作り手と淹れ手・プロの思いを形にしたティーポット
生活に身近な製品や工業製品など、さまざまな製品や部品をデザインから試作、量産まで一貫して手掛けている同社が、今回KOEDO E-PRO奨励賞を受賞したのは、1人分の紅茶を本格的に、気軽に楽しめるティーポット「茶鈴Tea-rin」だ。
「茶鈴Tea-rin」は、紅茶を淹れるプロ、茶葉を作るプロと同社との3者プロジェクトで開発された。きっかけは小江戸川越一番街の「川越紅茶館クーラクー」の店主・吉田氏の「茶葉で一杯分の紅茶を美味しく淹れられるティーポットで、良いものがない」という話だったという。そこに狭山の「やまとう栗原園」で和紅茶作りに注力してきた菅野氏の思いも重なり、「川越の文化の中心地と狭山の茶畑をつなぐ地域活性プロジェクト」としてティーポットの開発が始まった。
この「茶鈴Tea-rin」は、一般的なティーポットにある突き出た注ぎ口や取っ手がなく、一見「これは何?」と思わせる形だが、「1杯分のリーフティ」を楽しむための工夫がギュッと詰め込まれている。
まず圧倒的に扱いやすい。本体と蓋の2つのパーツだけでなので、洗うのも簡単だ。ストレーナー(茶漉し)も不要。茶葉が茶漉しに引っかかる煩わしさもない。素材はガラスのような透明感があるトライタン樹脂で、落としても割れにくい丈夫さに加え、断熱性も高いので熱湯を入れても素手で持てる。食洗器や漂白剤も使える。
手のひらサイズの丸いコロンとしたかわいらしいフォルムは、小江戸川越の総鎮守氷川神社の風物詩の風鈴をモチーフにしている。
「この形に行きつくまでに試作品をいくつ作ったかわかりません。とくに注ぎ口を安定させるのに苦労しました」と代表取締役の佐藤亘さんは話す。吉田氏、菅野氏だけでなく、家族や社員の意見やアドバイスを聞きつつ、改良を重ねていったという。注ぎ口の微妙なカーブは機械では作れないため、手作業で仕上げている。「小ロット生産だからこそ、労力を惜しまずにできます。一つ一つに命を吹き込んでいる感覚です」と佐藤さんは目を細める。