有害な溶接ヒュームガスを「吸水液」方式で除去する
「溶接ヒュームガス」とは、金属アーク溶接作業の際に発生する中毒性のある有害物質。人体に吸い込まれると体内に蓄積し、神経障害などの健康被害を及ぼす恐れがあることが明らかになったため、厚生労働省では2021年4月より労働安全衛生法施行令、特定化学物質予防規則を改正し、新たな告示を制定した。これにより溶接現場でのヒュームガスを除去することが義務づけられ、換気の徹底や呼吸器・マスク等の着用、ガスの測定、従事者の健康測定などが定められている。
もともと同社では有機溶剤ガスであるVOCの脱臭装置を開発・製作を行っており、20年にわたり改良を重ねてきたという経緯がある。今回KOEDO E-PRO奨励賞を受賞した「溶接ヒュームガス除去装置」は、上記の法改正にともない、この装置をヒュームガス除去にも使えるのではと考え、ガス除去に使う吸収液を開発したもの。「環境試験テストの結果、ヒュームガスの除去率92%という高い数値を得られただけでなく、ガス除去後の排気もクリーンであることから、装置として販売することになった」と開発担当の根岸朝志さんは話す。
すでに市販されている溶接ヒュームガス除去装置には「フィルター方式」や「水による除去方式」のものがあるが、使用後のフィルターや水溶液を有害物として処理しなければならず、ランニングコストも高いのが難点だった。この「吸収液方式」による除去装置の開発は同社が日本初。ガス除去後の吸収液を中和して下水として排水処理できるのも特長で、環境にも配慮しながら、ヒュームガスを無毒化することに成功した。